三島由紀夫の文章から

鏡子の家』より

 

 一般的法則とはなりえない苦悩、一般的な人間存在とは何のかかわりもない苦悩、これこそはブウルジョアが芸術家に於て愛するところのものだ。ブウルジョアがこの苦悩と引き代えに彼らに与える「天才」の称号は、一般的原理から人々の目を外らし、しばしの安息に身を横たえさせてくれる社会的功労賞のようなもので、こんな仕組によって、「芸術はしばし心を慰める」ことができるのである。

 

 

三島由紀夫鏡子の家』(新潮社、1964年)418ページ。

 

 

 

 

鏡子の家 (新潮文庫)

鏡子の家 (新潮文庫)