河合隼雄の文章から

『日本人とアイデンティティ――心理療法家の着想』より

 

 われわれが主体的にこの世に生きてゆこうとするかぎり、われわれは自分自身をそのなかに入れこんだ体系をもたねばならない。自然科学の知は確かに有用であり、何らそれを否定する必要はないが、われわれはそれをイデオロギーの代替品とするような錯覚をおこすのではなく、自分という主体をも包みこみ、自分と世界との有機的なつながりを与えてくれるもの――筆者はそれをコスモロジーだと思うのだが――を見出すように努めねばならない。

 

 

河合隼雄『日本人とアイデンティティ――心理療法家の着想』(講談社、1995年)210ページ。